高収入だけど休みが少ない?薬剤師の「ドラッグストア勤務」って実際どうなの?

薬剤師

薬剤師として働いているみなさん、ドラッグストア勤務って「高収入」のイメージがありますよね?

この記事では

  1. ドラッグストアが高収入な理由とは
  2. ドラッグストア勤務でのメリット
  3. ドラッグストア勤務でのデメリット

を見ていきながら、ドラッグストア勤務への転職をご希望の薬剤師さんのお役に立てる情報をまとめていきたいと思います!

ドラッグストア勤務が高収入なわけ

ドラッグストア勤務の薬剤師の年収は、調剤薬局に比べると高額だというイメージがあります。実際はどうなのでしょう。職場別に、薬剤師の平均年収をまとめてみます。

病院 400~600万
調剤薬局 450~700万
ドラッグストア 500~800万
企業(製薬など) 700~1000万

これを見ると、ドラッグストア勤務の薬剤師の年収が、業界内でも比較的高いことがわかります。

ドラッグストアが高待遇になる一番の理由は、「調剤薬局よりも勤務時間が長い」ことです。

調剤薬局の勤務時間は、病院の診察時間に合わせた「9:00〜18:00」といったケースが多く、残業も少ない場合がほとんどです。しかしドラッグストアは、営業時間(=勤務時間)が「10:00〜22:00」などと長く、残業も調剤薬局よりも多めです。また、夜間にシフトを組まれるケースもあるため、年収が高くなるのです。

また、調剤薬局での薬剤師の仕事は、機械的に処方箋の対応をすることが中心になっているため、薬剤師が自身の売上を上げようとするケースはほとんどありません。対して民間企業であるドラッグストアの場合、店舗の売上ノルマがあるため、薬剤師にも必然的に売上をアップさせる働きが期待されます。薬剤師が「売上アップ」を目指して仕事をするため、一人の薬剤師が作る売上が高くなり、当然給料にも還元されやすくなります。

採用に力を入れている

特に中小規模のドラッグストアでは、M&A(企業の合併買収・事業提携のこと、Mergers and Acquisitionsの略)によって大手ドラッグストアチェーンのグループに参加することで、事業再生を行う企業が増えています。プライベート商品の共同開発や共同仕入れによる収益力の向上などが可能になります。

そして大手ドラッグストアチェーンは、新規販売エリアへの新規店舗出店を積極的に行っています。最近のドラッグストア業界は、医薬品や日用品の販売だけではなく、地域におけるヘルスケアネットワークの構築も推進するための取引も増加しています。コンビニなどの異業種とのM&Aによって、利便性を取り入れる企業もあります。

調剤薬局併設のドラッグストアなどが増える傾向にあり、必要な薬剤師の確保にも力を入れている企業が多いということです。

また、ドラッグストア店舗の増加に加え、実は薬剤師一人あたりが一日に出せる処方箋の枚数には限界があります。これは「薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令」によって、以下のように定められています。

○薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令

(昭和三十九年二月三日)
(厚生省令第三号)

薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第六条第一項第一号の二(第二十六条第二項及び第四項において準用する場合を含む。)及び第八十二条の規定に基づき、薬局及び一般販売業の薬剤師の員数を定める省令を次のように定める。

(中略)
二 当該薬局において、調剤に従事する薬剤師の員数が当該薬局における一日平均取扱処方箋数(前年における総取扱処方箋数(前年において取り扱つた眼科、耳鼻咽喉科及び歯科の処方箋の数にそれぞれ三分の二を乗じた数とその他の診療科の処方箋の数との合計数をいう。)を前年において業務を行つた日数で除して得た数とする。ただし、前年において業務を行つた期間がないか、又は三箇月未満である場合においては、推定によるものとする。)を四十で除して得た数(その数が一に満たないときは一とし、その数に一に満たない端数が生じたときは、その端数は一とする。)以上であること。

引用元:厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/

つまり、一人の薬剤師が扱える処方箋の数は一日平均40枚までで、41枚を超える場合はもう一人薬剤師を雇用する必要があるということです。それによっても薬剤師が不足してしまい、出店候補地はあっても人材面で出店できないケースもあります。

そのためドラッグストアでは、薬剤師の採用に力を入れています。特に人材の少ない地方では、薬剤師の売り手市場となっており、年収などの条件交渉がスムーズに進みやすく、好条件での就職がしやすいです。

ドラッグストア勤務のメリット

薬剤師のドラッグストア勤務のメリットは、なんといっても高年収・好待遇であることです。業務時間は長くなりますが、その分圧倒的に稼ぎやすい職場になっています。

また、薬剤師としてスキルアップできることもメリットのひとつです。ドラッグストアでは医療用医薬品だけでなく、OTC医薬品(一般用医薬品のこと、Over The Counterの略)なども取り扱うことになります。取り扱う商品数も仕事の量も、病院の調剤薬局よりも多くなる状況で、仕事をこなすことができれば、その後のキャリアとしても優遇されやすくなるでしょう。

家族や周りの人の役に立てるようになる

たとえば、家族の誰かが体調を崩したとします。風邪っぽいのでとりあえず自宅にある常備薬を飲もう、となるケースがあるでしょう。

そのときに、ドラッグストア勤務していて市販薬の正しい知識があれば、どの薬を飲めばいいか、他の薬との飲み合わせや、今の症状で飲んでいい薬かどうか等、すぐにアドバイスすることができますよね。これも、ドラッグストア勤務のメリットだと言えるでしょう。

ドラッグストアのデメリット

休みにくい場合がある

ドラッグストアでの勤務は、総じてハードです。病院の調剤薬局に比べて、勤務時間が長く、残業もあります。さらに調剤薬局のないドラッグストアなどでは、レジ打ちや荷卸しといった雑用をしなければならない場合もあり、体力も要求されます。

また、ドラッグストアは平日・祝日でも開いていて、休日はシフト制になるため、土日祝に休みたい人には不向きです。一般のバイト等と違い、そもそも人の少ない薬剤師間でシフトを調整しなければならないため、勤務時間の調整をしづらい場合もあります。

なお、薬剤師が少ない店舗に勤務する場合や、地方などでは店舗に一人しか薬剤師がいないという場合もまれにあります。そのような場合、薬剤師が不在で医薬品が販売できなくなるから、薬剤師は休めないのでは、というイメージがあります。

そのような場合は、他店から代わりの薬剤師が応援に来たり、チェーン店ではヘルプ専門の薬剤師が配属されていたりするため、休みが取りにくくなるといったことは実際はありません。ただ、人によっては精神的に休みづらい、という場合もあるかもしれません。

接客が必須

ドラッグストアの薬剤師は、お客様から症状を聞き出し、必要に応じて最適な薬を提案しなければなりません。医薬品に関する疑問などに答えたりする必要もあります。お客様にわかりやすく服薬指導したり、安心して購入していただくためのコミュニケーション能力が必須になります。

お客様が多く、他のスタッフが不足した際は、薬剤師もレジ対応などをしなければならない場合もありますし、トラブル発生時のクレーム対応をしなければならない場合もあります。店舗によっては、一人の店長が複数店舗を管理していて、たまたま不在ということもあるためです。

ドラッグストアでの薬剤師の仕事って?

ドラッグストアでの薬剤師の仕事は、主に医薬品の販売、お客様のニーズに合わせたアドバイス、処方箋の調剤業務、レジ業務、品出し、受発注業務などです。調剤薬局が併設されている店舗の場合は、おくすり手帳を見て薬やサプリメントとの飲み合わせをチェックしたり、薬に関するカウンセリングなども行います。

病院の薬局勤務の場合よりも、お客様と接する機会が多いため、接客が好きな方は特にやりがいを感じられるはずです。さまざまなお客様が来店するため、対応力もつきます。外国人のお客様が多く訪れる店舗では、語学が役立つ機会もあります。

利益を優先した働きが求められる

ドラッグストアの薬剤師から、高額で効果の高い商品をおすすめされた経験などがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

ドラッグストアは病院と違い民間企業ですので、売上アップを目指していくことになります。医薬品を取り扱うことのできる薬剤師は、ドラッグストアの売上に直接的に貢献することになるでしょう。お客様に商品を提案する他、商品陳列、ポップ制作など、販売に関する業務にも取り組む必要があります。

OTC医薬品の取り扱いがあり知識を得られるのも魅力

ドラッグストアでは、医療用医薬品のみを取り扱う病院の調剤薬局では得られない、OTC医薬品に関する知識を得ることができます。市販薬を自分や家族が購入・服薬する際にとても役立ちます。

医薬品以外にも、サプリメントや健康食品などに関する相談も受けるため、さまざまな知識を得られます。

調剤薬局併設型店舗の方が高収入

最近増えてきた、店内に調剤薬局が併設しているタイプのドラッグストアですが、調剤薬局のない通常のドラッグストアよりも高い収入を得ることができます。

患者からすれば、日用品の買い物もできるし、病院で処方された薬を受け取ることもできる便利なお店ということになるため、店舗あたりの売上が平均2割上がります。収益力が高い分、薬剤師の年収も通常のドラッグストアよりも高めになっています。

大手ドラッグストアでは多くがこの調剤薬局併設型への転換を急いでおり、現在ではドラッグストアの薬剤師求人のほとんどはこの調剤薬局併設型店舗での求人となっています。

調剤薬局併設型ドラッグストアでの仕事は、調剤・服薬指導・薬歴管理といった、病院の調剤薬局と同じような仕事内容です。一般的に、調剤薬局併設型店舗では、薬剤師の仕事は調剤に関する仕事のみを担当することになります。この薬剤師しかできない仕事に特化するため、高収入の上、調剤業務に関するスキルを集中して高めることができ、より好条件を求める薬剤師に人気の職場です。